新NISAのスタート以降、資産形成への関心はかつてないほど高まっています。テレビや新聞だけでなく、YouTubeやSNSでも毎日のようにNISAの話題を目にするようになりました。その一方で、FP相談の現場ではこんな声を耳にすることがあります。「NISAって結局何を買えばいいんですか?」「みんなやっているから始めた方がいいですよね?」「今から始めても遅くないですか?」もちろん関心を持つことは良いことです。しかし、こうした相談を受けるたびに感じることがあります。それは、「何を買うか」の前に、「何のために始めるのか」が整理されていない人が意外と多いということです。今回は、NISAに向いている人・向いていない人という視点から、資産形成の基本について考えてみたいと思います。NISA利用者は増えているNISAへの関心の高まりは、実際のデータにも表れています。金融庁によると、2024年末時点のNISA口座数は約2,560万口座となり、新NISA開始後に大きく増加しました。また、NISAを利用する人の年代も広がっており、若い世代だけでなく、40代・50代・60代以上の利用も増えています。こうした状況を見ると、「みんながやっているから始めた方がいいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、利用者が増えていることと、自分に合った資産形成ができることは別の話です。むしろ利用者が増えている今だからこそ、「なぜ自分はNISAを始めるのか」という目的を整理することが大切になります。引用元:金融庁「NISA口座の利用状況調査」NISAは「儲かる制度」ではない印象的なのは、NISAに対する誤解が少なくないという点です。NISAという言葉だけが先行し、「儲かる仕組み」と捉えられているケースも見受けられます。しかし、NISAの本来のメリットは、運用で得た利益に税金がかからないことにあります。まずは制度の目的や仕組みを正しく理解することが、資産形成の第一歩といえるでしょう。NISAは投資商品ではありません。株式や投資信託などを運用した際に得られる利益や配当金に対して、本来かかる税金が非課税になる制度です。つまり、NISAそのものが利益を生み出すわけではありません。それにもかかわらず、「NISA=儲かる」というイメージだけが先行してしまうことがあります。実際に相談の中でも、「NISAでおすすめの銘柄はありますか?」という質問を受けることがあります。しかし、その前に確認したいのは、「何のために資産形成をしたいのですか?」ということです。「非課税」の意味を理解していますか?実際には、「そもそも非課税や節税の意味がよく分かっていない」という方も少なくありません。確かに、資産形成に興味はあるけれど、税金の仕組みまではよく分からないという方も少なくありません。例えば、通常の投資口座で利益が出た場合、その利益に対して約20%の税金がかかります。10万円の利益が出ても、手元に残るのは約8万円です。一方でNISA口座であれば、その利益に税金がかかりません。これがNISAの大きなメリットです。つまり、NISAの本質は「利益を大きくする制度」ではなく「利益を目減りさせにくくする制度」なのです。「NISAに向かない人」とはどんな人?「NISAに向かない人はいる?」と聞くと、投資経験がない人や、お金の知識が少ない人をイメージするかもしれません。しかし、そうとは限りません。むしろ向いていないのは、目的が曖昧なまま始めてしまう人ではないでしょうか。例えば、みんながやっているからYouTubeで見たからなんとなく損している気がするからという理由だけで始めるケースです。目的が曖昧だと、相場が下がった時に不安になります。利益が出ればすぐ売りたくなります。結果として、長期運用というNISA本来のメリットを活かせなくなってしまいます。「何を買えば儲かるか」で止まっていないか資産形成の相談で多いのが、「どの銘柄がいいですか?」という質問です。もちろん商品選びも大切です。しかし、「何を買うか」よりも先に、「何のために運用するのか」を考える必要があります。老後資金なのか。教育資金なのか。将来の選択肢を増やすためなのか。目的によって、運用期間も必要金額も変わります。ところが、YouTubeやSNSの情報だけを見ていると、いつの間にか「何を買えば儲かるか」だけに意識が向いてしまうことがあります。それでは本末転倒です。相場が下がった時に思い出したいこと相談の現場では、NISAを始めたものの運用が下がり、「売った方がいいですか?」という声を耳にすることがあります。こうした場面で大切なのは、始めた時の目的を思い出すことです。例えば、老後資金づくりのために20年後を見据えて始めたのであれば、数か月や数年の値動きだけで判断する必要はありません。むしろ、長期運用を前提としているなら、短期的な値動きに一喜一憂しないことが大切です。資産形成は、短距離走ではなくマラソンです。途中の上り坂や下り坂だけを見ていては、ゴールを見失ってしまいます。YouTubeが悪いわけではない「NISAを知ったきっかけがYouTubeだった」という方も少なくありません。確かに現在は、YouTubeをきっかけに投資へ興味を持つ方が増えています。それ自体は悪いことではありません。実際に学ぶきっかけとして有効な面もあります。ただし、情報を受け取る側が注意しなければならないことがあります。それは、印象に残る言葉だけを覚えてしまうことです。「S&P500」「オルカン」「長期投資」「複利」といった言葉だけが一人歩きし、なぜそれを選ぶのかという部分が抜け落ちてしまうことがあります。だからこそ、情報を集めること以上に、自分自身の目的を整理することが大切なのです。クリエイティブライフが考える資産形成の第一歩私たちがNISAの相談を受ける時、最初に確認するのは銘柄ではありません。「何のためにお金を増やしたいのですか?」ということです。老後資金。教育資金。住宅購入後の資産形成。目的によって考え方は変わります。そして、投資は儲けるためだけのものではありません。物価上昇への備えでもあります。将来の選択肢を増やすための手段でもあります。だからこそ、NISAを始めるかどうかよりも、まずは自分が何を目指しているのかを整理することが大切です。まとめNISA利用者は年々増えています。しかし、利用者が増えていることと、自分に合った資産形成ができることは別問題です。NISAに向かない人とは、投資経験がない人ではありません。お金の知識が少ない人でもありません。本当に向いていないのは、「何のために資産形成をするのか」が整理できていないまま始めてしまう人です。NISAのメリットは「儲かること」ではなく、「非課税」であること。そして、長い時間をかけて資産形成を支える制度であることです。何を買うか。どの銘柄が良いか。もちろんそれも大切です。しかし、その前に考えたいのは、「なぜ始めるのか」という目的です。目的が明確になれば、相場の上げ下げに振り回されにくくなります。NISAはゴールではありません。人生の目標を実現するための手段です。だからこそ、「何を買うか」より先に、「何のために始めるのか」を考えてみてはいかがでしょうか。